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記事2014年3月23日 2231号 (1面) 
自民党文部科学部会・日本経済再生本部大学のガバナンス改革で勉強会
3氏が意見表明
佐藤桜美林学園理事長「私学の多様性認めて」
学長選考方法や学長補佐体制などが焦点に

 自由民主党の文部科学部会(丹羽秀樹部会長=衆議院議員)と日本経済再生本部(高市早苗本部長=衆議院議員)は、3月14日、東京・永田町の党本部内で、大学のガバナンス改革に関する合同勉強会を開いた。

 この日は、冒頭、塩崎恭久・日本経済再生本部長代行と丹羽部会長があいさつした後、平野俊夫・大阪大学総長、佐藤東洋士・桜美林学園理事長・桜美林大学総長、北城恪太郎・国際基督教大学理事長(日本アイ・ビー・エム株式会社相談役、経済同友会終身幹事)の3氏から、大学のガバナンス改革に関する意見を聴取した。

 この中で平野大阪大学総長は、「研究型大学のガバナンス改革に係る大阪大学の取り組み」と題して、世界トップ10≠ノ向けた同大学の取り組みを紹介。

 その上で世界の大学と競争するためには、学長選考会議で選考と解任の理由を明確化し、学長の業績評価の義務化、運営交付金等の一部を学長に配分、ポストの配置権を学長に与えること、学長を支援する専門組織の充実、各国立大学が策定する中期計画期間(現行6年)の延長(10〜12年)等を提案した。

 佐藤桜美林学園理事長は、私立大学は建学の精神を有し、大学のガバナンスについても多様な方策・工夫を講じてきており、私立大学におけるガバナンスを国立大学法人と同様に一律に論じることは必ずしも適切ではないものと考えている、とし理解を求めた。

 桜美林大学においては、教員採用等の人事に関しては、学科単位で実質的に進められ、大学を総括すべき立場の学長の意向が全く反映されない状況にあったことから、学長のリーダーシップの下に全学人事委員会を設置し、大学全体を見渡した計画的採用および人事ができるように改善したこと、教授会の審議事項に関しては、教学、すなわち教育活動、研究活動に限ったこととし、大学経営は理事会とするよう整理したことを報告。その上で文部科学省が検討を進めている学校教育法第93条の改正については賛成の意向だと語った。

 北城国際基督教大学理事長は、大学のガバナンス改革について、1月28日、自由民主党の日本経済再生本部・教育再生実行本部合同会議に次ぐ2度目の意見表明となった。その中で北城理事長は、本来、学長や理事会に最終決定権がある事項について直接責任を負う立場にない教授会が意思決定機関として運営されている大学が多く、学長のリーダーシップによる迅速な大学改革を阻害している、と指摘。学校教育法第93条に関しては、「大学には、教育及び研究に関する学長の諮問機関として教授会を置く」と改めるよう提案。国立大学の学長選考に関しては、学外の意向が反映するよう国立大学法人法第12条を改正し、「学長選考会議の委員の数は、経営協議会に所属する学外委員を過半数とする」とし、「学長選考においては、原則として教職員による意向投票は行わないものとする」との方針を文部科学省令で示すよう求めた。

 また、私立大学の学長の選考に関しては、私立大学も国民の税金によって支援されている社会的存在であることから、私立学校法で、ガバナンスの中心である学長の選考方法を定めることについて検討すべきだ、と語った。

 こうした意見表明に対して、出席の議員からは、「外部が正しく、内部が正しくない、という硬直した話ではないだろう。外部の価値観を取り入れることについてはどういうことがいいのか」といった質問が北城理事長に出された。北城理事長は、「外部の人は、社会の変化を大学に伝えるという点で意味がある。学内を変える時に学外の人をてこに使っている例もある」と回答。

 また別の議員からは、「私学には建学の精神があると言われるが、社会的な役割は大きい。何もやらなくていいとは言っていない。私学は、我々にもわかりやすい具体的な(改革)案を出してほしい」との意見も出された。

 さらに平野大阪大学総長は、「学長には人事権がなく、仮に学長の意向を押し切ってやったとしても今の選挙方法ではその学長は消されてしまう。また学長の権限をバックアップする体制も必要。意向投票については、してもしなくてもいい。一つの要因にすぎない」と語った。

 また、佐藤桜美林学園理事長は、「学外の人を入れるとうまくできるかというと、そうではない。多様性を認めてほしい。(私立大学の)活力をなくさないようにしてほしい」と訴えた。

 自民党の文部科学部会と日本経済再生本部は3月19日にも大学のガバナンス改革に関して3人の有識者からヒアリングを行っており、納谷廣美・明治大学学事顧問らが意見表明している。

 両組織では合同でさらにヒアリングを続け、国公私立大学のガバナンスの在り方を検討することにしている。

 文部科学省では今年2月の中教審大学分科会の審議まとめ「大学のガバナンス改革の推進について」を受けて学校教育法等の改正の準備を進めており、学校教育法等の改正案は政府の成長戦略関連法案としても位置付けられている。



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