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記事2010年4月13日 2167号 (3面) 
低炭素社会実現に取り組む私学 D
東京都市大学
CO2の排出ゼロ水素燃料エンジンバス開発
横浜エコキャンパスは生きた教材

 二〇〇九年四月三日、東京都市大学(中村英夫学長、東京都世田谷区、旧・武蔵工業大学)の入学式当日、開発に成功した二酸化炭素排出量ゼロの水素燃料エンジンバスの初デビューとなる試乗会が行われた。この日を皮切りに、五月に国土交通省での試乗会、六月には環境省等のエコライフ・フェア展示、七月の資源エネルギー長期政策議員連盟の試乗会では鳩山由紀夫衆議院議員(現総理)も試乗、カーエレクトロニクス専門展でも試乗会を実施、九月から十月にかけては低炭素地域づくりを目指す千代田区の環境交通社会実験で東京駅周辺を循環運行。その後、室蘭工業大学と連携協定を結び、北海道室蘭市でも走行実験を行った。昨年十二月までの走行距離は一万一千キロ。将来は、同大学のシャトルバスとして世田谷・等々力・横浜の三つのキャンパスを結んでいくことになるだろう。
 公道を走るのに必要なナンバープレートを取得するため、排ガスJE05モード試験(日本車両検査協会)を受けた。その際の排ガス規制値は国土交通省が設けた世界水準の「ポスト新長期規制値」と言われる厳しいものだった。しかし、水素燃料エンジンバスはこれを排気清浄化装置なしで軽々とクリア。水素燃料エンジンバスのNOxは〇・〇二(ポスト新長期規制値〇・七〇)、COは〇・〇〇(同二・二二)、HCは〇・〇二(同〇・一七)だった。
 開発は一九七〇年にさかのぼる。この年、工学部機械工学科内燃機関工学研究室の古浜庄一教授(故人・元学長)のグループが日本初の水素エンジンを開発。七四年には水素エンジンを搭載した車「武蔵一号」が環状八号線を走行した。九〇年には日産車に液体水素ポンプを搭載(武蔵八号)、九七年のCOP3(国連気候変動サミット第三回締約国会議)京都会議では武蔵一〇号が展示された。今回の水素エンジンバスの開発には同大学の故・瀧口雅章准教授や水素エネルギー研究センターの山根公高准教授らが中心になってあたった。車両は日野自動車から提供してもらった。
 水素は、水(H20)を電気分解すれば容易に作ることができ、それを燃やすと酸素と結びついて元の水に還る。クリーンなエネルギーだ。ただ、空気を取り込んで燃焼させる内燃機関は、空気中に窒素が含まれているため窒素酸化物を排出してしまう。この点を改善したのが今回の水素燃料バスである。
 燃料の水素は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)等の水素・燃料電池実証プロジェクトで提供しているJHFC川崎水素ステーションで補給している。水素ステーションは首都圏を中心に十一カ所設置されている。
 山根准教授は「水素を燃料とすればパワーもあるし、既存の技術が応用でき、かつ液体水素にすれば運ぶのも簡単。耐久性も信頼性もある。太陽エネルギーを使って水から水素を作れば、地球環境問題とエネルギー枯渇問題を同時に解決できる。ただ、現状では水素はガソリンに比べ高価なので、水素を安く作るための国のプロジェクトが必要だ」と話す。
 武蔵工業大学が初めて水素エンジンを開発してから四十年。ドイツでもBMWが二〇〇六年のCOP14の会場に液体水素を燃料とする乗用車を展示。同年、日本でもマツダが水素ロータリーエンジンのRX―8ハイドロジェンREを実用化した。いずれもガソリンとの併用が可能なバイ・フューエル(二種類の燃料を搭載して使い分ける)。現在、東京都市大学も、電気ハイブリッドの水素燃料エンジントラックを試作中だ。
 故・古浜教授は、工学系大学の務めは三十年先の展望を描き社会から必要とされたとき技術を提供できること、学生に夢を持たせるような研究をして結果的に社会に役立つことがいちばんいい、とよく話していたそうだ。
 ノルウェーでは、ベンチャー企業を学校に引き入れ産官学で育成して、社会に戻し、そこに学生を就職させているとのこと。「日本でもそういうことができれば」と山根准教授は言う。
 東京都市大学の理念は持続可能な社会発展をもたらすための人材育成と学術研究=B新エネルギーの研究だけでなく、横浜キャンパスはエコキャンパスとして、ソーラーシステムや氷蓄熱式ヒートポンプエアコン、雨水利用など環境保全のための数々の工夫がされ、キャンパス自体が生きた教材だ。一九九八年にはISO14001の認証も取得した。
 海外でも「日中共同沙漠緑化フィールド研修プログラム」「オーストラリア熱帯雨林保全プログラム」「ネパールフィールド研修プログラム」などを通して学生たちが環境保全・復元の手法を学んでいる。



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