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全私学新聞

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記事2010年2月23日 2162号 (3面) 
全審連 通信制高校問題で文科省に要望書
一部でサポート校に教育丸投げ
通信教育規程改正を要望

 全国私立学校審議会連合会の近藤彰郎会長、實吉幹夫副会長、吉田晋運営理事は二月十六日、同連合会が十年以上にわたって、文部科学省に制度の改善を求めてきた「通信制高校問題」で、鈴木寛文部科学副大臣やこの問題を担当する初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室などに通算九度目となる要望書を提出した。
 同連合会の要望とは、@通信制高校については、国が具体的なガイドラインを示すこと、A株式会社立学校の新たな設置認可は慎重にすべき――という二点。今回の要望書では、このうち@に関しては、通信制高校の一部に学校ではない、いわゆるサポート校に教育を丸投げするなど公教育機関としての責務を果たしていない事例が少なくないこと、通信制高校は教育活動が複数の都道府県にまたがるため、認可した県だけで指導監督することには限界がある。そうした実態を考慮し、高校通信教育制度が時代に則して健全に運営されるよう早急に実態調査を行い、その結果を踏まえて「高等学校通信教育規程」を改正することなどを求めている。通信制高校と密接に関係するサポート校とは、通信制高校の生徒の補習やレポート指導等を行うことを目的に、二十年ほど前から開設された民間の学習施設。その後、広域通信制高校の増加などとともに広がり、今ではサポート校が前面に出て、(通信制)高校等の卒業資格取得を謳うところが増え、現在では全国二十カ所以上に学習施設を展開、二千人を超える生徒を抱えるサポート校も出現している。そうした学習施設でのトラブルなどが県に持ち込まれても、通信制高校の認可県以外には指導監督権がなく、また実態把握もままならない、という問題があり、毎年行われている同連合会総会での専門部会でも都道府県の私立学校行政担当者から文部科学省による制度改善等を求める声が上がっている。
 またサポート校では高校卒業資格が得られないため、サポート校の多くの生徒は、(通信制)高校にも在籍する。そのため、サポート校の年間数十万円から百万円近い学費に加えて、通信制高校の学費も支払う必要が生じる。
 一方、Aに関しては、構造改革特区制度で設置された株式会社立の高校以下の約半数の学校が赤字経営の状況で、教育の質の維持・向上の観点からも公教育施設として不適切な問題が生じている。こうした現状から株式会社立学校の今後の設置認可については慎重にすべきであり、当該設置者が学校法人化するについても教育の質を確保するため、学校法人設立認可手続きによるべき――と指摘している。
 学校設置会社による学校設置事業の評価を行っている構造改革特区推進本部評価・調査委員会では、通信制高校が不登校生徒等の再チャレンジの場として機能している半面、「既に過当競争になりつつあると認定した地方自治体(市町村等)の意見もあることに配慮すべきだ」との評価意見をまとめており、特区認定地方公共団体の中には広域通信制高校等の情報を十分把握していないなど、セーフティーネットの面で問題が生じていることも認めている。文部科学省は株式会社立学校の実態を把握するため、調査を行っているが、詳細は公表されていない。今回の全審連の要望に対して同省は通信制高校の一部に問題が生じているとの認識を示すにとどまっている。

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