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記事2009年11月23日 2154号 (4面)
CO2ベースで基準年比6.2%の削減を達成
複雑化した環境問題群解決の研究も
秋色のケヤキ並木が正門前かられんが色の本館まで真っすぐ続く。アプローチが印象的な成蹊大学(栗田恵輔学長、東京都武蔵野市)は、小中高校・大学が一つのキャンパス内にあり、学園全体で環境活動に取り組む。今年九月、環境NGO全国青年環境連盟(エコ・リーグ)のCampus Climate Challenge実行委員会が企画・実施した調査「エコ大学ランキング」で私立大学三位になり、改めて取り組みが注目された。 地球環境の保全・維持が大きな課題になっている今、環境問題を解決できる人材の養成と研究を環境活動の基本方針に掲げる。 学園環境委員会を設置し、組織的に環境保護に取り組んでいる。二〇〇八年十一月には、環境マネジメントシステム(EMS)の国際規格であるISO14001認証を取得した。 このISO認証は「内部監査」が要求されるため、学園で内部環境監査員を養成、監査員は総勢八十人となった。今年の内部環境監査には初めて学生も参加した。 既に二〇〇六年六月から、地球温暖化防止活動として政府・環境省が展開する環境運動「チーム・マイナス六%」にも参加、夏はクールビズ、冬はウォームビズを実行している。 リサイクル活動では、紙のリサイクルに二〇〇三年度から取り組んでいる。また、昨年度は大学祭で発生した生ゴミをメタン発酵処理の原料として提供し、マテリアルリサイクルを行った。 エネルギー消費状況は、年度・月ごとの電気・ガス・水道・灯油・重油の使用状況、熱量の原油換算・CO2換算のデータをホームページに掲載している。一般公開ではないが、建物ごとのデータを教職員に示して可視化し、省エネ意識を高めている。 この結果、二〇〇八年度の省エネ実績は、CO2ベースで約六・二%(基準年二〇〇七年度)もの大幅削減を達成した。二〇〇九年度は、さらに上積みできると学園環境委員会委員長の田中潔教授は話す。 屋上緑化、日射熱遮断塗装屋上、各種環境技術を使用した省エネ型校舎などが順次整備され、西一号館(大学院)は太陽光発電も設置した。さらに雨水浸透人工芝、雨水浸透インターロッキング、雨水浸透アスファルト、植樹による景観の緑化も進め、小学校にはビオトープがある。 環境教育に関しては、二〇一〇年度から念願の全学部共通教養科目「成蹊教養カリキュラム」が立ち上がり、桃李成蹊科目A群の中に「成蹊環境セミナー」を置いた。ここで環境マネジメントについて実践的に教える。成績優秀な学生には「内部環境監査員」の資格を与える予定だ。 また同科目A群に置かれる「成蹊ボランティア」でも同様の仕組みを考えている。 二〇一〇年度からは、内部環境監査に、数人の学生を入れる予定である。学生からどんな面白い意見が飛び出すかと、学校側の期待は膨らむ。 研究分野では、理工学部のプロジェクト「人と環境に優しい統合化された社会システム研究基盤整備」が、二〇〇八年度の文部科学省・私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択された。プロジェクト期間は五年間。キーワードは「統合化」と「ユビキタス」。複雑化した環境問題群を解決するための方法の創出と確立を目指す。 研究タイトルには「ユビキタスグリッドによる環境情報の測定」「環境浄化技術の研究開発」「環境関連物質の光化学的変換反応」など二十のテーマが並ぶ。 直近の課題は、東京都の「都民の健康と安全を確保する条例」(環境確保条例)。 二〇一〇年度から五年間、温室効果ガスの八%削減が課され、最終年の五年後には一〇%上積みされるという。八%の削減目標は十分クリアできる自信があるが、一〇%の上積みは厳しい。「排出量取引は認められているが、さらなる省エネに向けて努力していきたい」と田中教授は話している。
(注)エコ大学ランキングは今年は第一回で、国公私立合わせて三百三十四大学にアンケート調査票を送付。有効回答数は百七大学(うち私立は四十二大学)。 |
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