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記事2001年1月23日 2号 (8面)
『正ちゃん(上)』小竹正一著
未来へのタイムカプセル 「生い立ちの記」のすすめ
| 「あの時書いた『生い立ちの記』の事実に、夢のような突然の再会をして、忘れていた自分の人生を新たに見つけました」 著者(小竹正一氏)が小学校で教えていたころから五十年を過ぎたある日、一人の教え子から届いた手紙だ。 著者は子供たちに小学校六年の卒業制作として、両親が健在なうちに自分の生い立ちを記録に残すように指導していた。生まれてから六年までの歩みを両親から聞き、それを材料にして、原稿用紙三十枚ほどの作文につづらせていた。この作文が著者の生涯のテーマとなっている子供たちの教育、自分史作成の原点となっているのだ。「生い立ちの記」とはどのようなものかを児童に理解してもらうために、著者は母親から聞いて書いた「正ちゃん」と題する作文を、一つのモデルとして聞かせていた。 「1 作文『正ちゃん』」では著者が二人の姉を亡くすが、「正ちゃんは綾ちゃんの生まれ代わりなのよ」と、父母から愛情を受ける。 「20 初任給七十五円」。終戦の年の暮れ、師範学校の恩師から就職についての通知があった著者の、うれしくて寝つけなかった様子が分かる。若杉国民学校に「奉職」することが決まり、教員生活がスタートしたころの著者の初々しい心情が当時の日記からうかがい知ることができる。行間には人生がにじみ出ている。 「将来の喜びと両親への感動のためにも」「豊かな人生を生みだすためにも」、著者は「自分史づくり」を勧めている。 (文芸社 本体価格一、三〇〇円) |
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